お開きになったようだし、気持ち良くなってる社長を連れて帰らなくては。
接待の席で余り酔わない大和社長が今日は酔っている。
それだけこの場が楽しかったのだろうか。

席を立つ前に挨拶をしようと東山氏をと見ると、驚いたことにすでに座卓に突っ伏してぐーぐーと眠っている。ぴこんっと跳ねた一束の髪に腕まくりした袖は左右で長さが違う。
傍らには脱ぎ散らかした靴下が。

えええー

何これ、”世界のヒガシヤマ”がぁ。
ダンディなおじさまイメージがぁ。
初対面で極上のおじ様イメージからの直滑降。

奥さまは子どものように眠る夫の背中にカーディガンをかけて笑っている。

「ごめんなさいねぇ。楽しくて飲みすぎちゃったみたいなの。挨拶はいいからお帰りなさいな。また正式契約の時にお会いしましょう。こちらのことは気にしないで。あなたも社長のお世話があるでしょう」
よっぽど楽しかったのねぇと笑う奥さまの表情は柔らかい。

ごもっともでございます。うちの大和社長も目が半開き。
ずいぶん眠くなってるらしい。しめしめ、これならお説教モードにも入るまい。下北さんも目がとろんとしているし早く退出しなければ。