ほんの数分で奥さまは私のいるソファーに戻って来て何事もなかったかのようにデザートのスイーツを食べ始めると、それからは櫂のことには一切触れずにハウジングセンターのイベント企画の話などを始めた。

彼女も私同様でもともと建築畑の人ではなくて東山氏と結婚して独立した時からこの業界に関わるようになったのだと教えてもらった。

「だから、専門用語でペラペラ始まると、イラっとするのよね。そりゃあこの世界に入ってから多少勉強もして覚えたわよ?でも、特別専門性の高い話になるともうお手上げ。私のいないところでやって欲しいわ。その辺、森社長は大丈夫なの?」

「うちの社長もそんな感じです。でも、二人だけの時はそんな専門性の高い話はしないので大丈夫ですよ」
うちの社長は専門性の高い話は光さんたちと話してるし、私とはしない。基本的に私にわからない話は振ってこない。
当てにならないことがよくわかっているから。

私たち、プライベートな時にする話は食べ物や進さんちの子どもの話とか本当に雑談。
進さんちの子どもは大和さんにとっては甥や姪。私にとっても血のつながった遠い親戚になるのだから話が盛り上がるのは当然と言えば当然なんだけど。