「うちの事務所は長野県内の業界関係者ともつながりがありますので、失礼ながらフォレストハウジングさんのことも調べさせていただきました」
東山氏の後に副社長をしている奥様がさっきまでの雰囲気を変えてはきはきと言葉をつないでいく。

「特許を取得した耐震構造住宅以外の従来の住宅建設でも丁寧な仕事が評判だそうですね。アフターフォローを含めて悪い話は聞きませんでした。
・・・桐山に関しては、このところいつものクールな様子と違い喜怒哀楽が激しかったので私の方が気になってしまって。何かあったのではないかと問い詰めました。そちらの秘書さんと昔の知り合いだそうですね。
ですが、これは仕事。それとこれとは全く次元の違う話であることを信じていただきたいわ。ね、桐山」

「もちろんです」正座していた櫂がもっともだとでもいうように力強く頷いた。

「建設会社の選定に関して他意はありません」
櫂はちらっと私を見た後、大和社長を真っ直ぐ見て頭を下げた。

大和社長は何も言わずそんな櫂をじっと見つめている。
私はこの居心地の悪さに気分が悪くなりそうだ。