「あら、新発田社長に聞いた通りだわ。お二人とも本当に仲がよろしいのね。ふふっ。桐山、もう失恋しちゃったわね」不意に東山氏の奥さまがクスクス笑いだした。

失恋?櫂は社内で一体何を話したんだろう。
その不穏な言葉に厳しい目を櫂に向けたのは私だけでなく大和社長もだった。

「やめて下さい、副社長。フォレストハウジングの皆さんに不信感を持たれてしまうじゃないですか」
慌てて櫂が腰を浮かせた。

「あ、そうだわね」東山氏の奥さまはまずいことを言ったとばかりに口を手で押さえた。

「ホントにキミはひと言多いっていうか余分なことを言うね」東山氏が呆れ声を出して
「ごめんなさい」と夫に叱られた奥さまはシュンとうなだれる。

私は厳しい目を櫂に向けたまま逸らせずにいる。
どういうつもりだろう。
櫂は会社で何を話しているんだろう。

「誤解がないようにビジネスの話をさせてもらいましょう」
東山氏が大和社長と私のこわばった表情を見て真剣な様子で語り始めた。