なんてタイミングだろう。

いや、あの櫂のことだからタイミングを計っていたって可能性の方が高い。
でもそんなことどうでもいい。このままでいいはずがない。

怒りで震える手を押さえながらスマホをタップして電話をかけた。

「灯里?」

すぐに電話がつながり、櫂のプライベートなときの穏やかな声が聞こえてきて余計にむかむかと腹が立ってくる。

「フォレストハウジングの本木でございます。社長秘書のわたくしご連絡を頂いたようですが、何か社長に急用がございましたか?」
わざとらしく嫌味を言ってしまう。

「え?ああ、”社長秘書の本木さん”ね。本木さんの携帯番号がわかってうれしいよ」
櫂は楽しそうな声を出す。きっと笑っているのだろう。

そんな彼の言葉にも怒りが増す。