「言いつけるなら昼めしの時に言えばいいだろ。行くぞ」
ぷんぷんする私をなだめもせずニヤッと笑うと腕をとって立ち上がらせようとする。

「え?お母さんと一緒ですか?」ぱあっと笑顔になると
「家で昼めし準備してくれてるらしい。わかったらさっさと来い」反対に社長が嫌な顔をした。

「行く、行きます。すぐに出ます」

急いで立ち上がり、杉本さんに「お母さんのところに行って来ます」と声をかけた。

「はあい、行ってらっしゃい」と笑顔で送り出す杉本さんの隣には同じく笑顔の下北さんが。

「あれ?下北さん一緒に行かないんですか?」
「あ、俺愛妻弁当あるから」
語尾にハートマークが付いていそうな言い方でウインクされた。

「愛妻弁当!愛されてるんですねー。じゃ私も愛妻じゃなくて愛母ご飯食べてきますぅ。社長、早く行きましょ」
愛車のキーを手にした。

「”お母さん”のところってさ。もはや大和のじゃなくて灯里さんのお母さんって感じだよね」と下北さんと杉本さんが笑う。

「こっちに来てから娘のようにかわいがってもらってますからー。じゃあ行ってきます!」
早く早くと社長の腕を引っ張った。