人間は驚き過ぎると本当に
声が出なくなるんだなと初めて思った。
この人暗くて顔がよく見えないけれど
結構整った顔立ちしている…。
私よりは確実に歳上だろうな…。


「……許可なんて…無理です。」


「どうしても?」


「な、何で私なんですか!?」


「気に入ったから。じゃダメ?」


「…意味が分かりません。それに…素性の分からない人と…



「あぁ!まだ名前言ってなかったな。俺の名前は、蒼眞(ソウマ)だ。で、君は?」


「は、犯罪者に名前なんて言うわけないです!」


「写真消したんだから、犯罪者じゃねぇーだろ。」


「………海結(ミユ)」
何で怒られなきゃいけないのだろうか。
と思いながらも名前を言う。


「よろしくな、海結!」


そう言うと私に手を差し出した。


「……よろしく」



ハッと我に返ってすぐに手を離した。


「もう帰ります。では」


「ちょ、ちょっと待てよ、これやる。」


「?」


手の平には綺麗な色の石?
何だろうこれ?


「シーグラスだよ。」


「……へぇ、綺麗。」


「…ふ、お前って笑うと結構可愛いのな、」


「は?え?」


「撮らせて貰ったお礼にあげるよ」


「な、!!い、要らない!」


「その割には嬉しそうな顔してたぞ。」


「し、してない!」


「いーから貰っとけ。じゃあまたな、海結」


「っ!あんたなんか、に、二度と会いません!」


「…っはは、それは傷つくなぁ。じゃあまたな」


頭をポンポンと撫で、そう言った。



…何なの!?
私がこんなので喜ぶとでも!?
で…でもシーグラス?は貰っておく。
次に会ったら絶対に返してやるんだ!
その為にも持っておこう。
本当はもう二度と会いたくないけど!!








海の波音を聴きながら私も家へと帰った。


蒼眞…。名前しか知らないけど
本当に失礼な奴だった!!




引越し初日なのに、何故かその夜はなかなか眠れなかった。