「……ここ、子供の頃に来たことがある気がする。」


「え?」


「よく覚えてないけど、たぶん…」


「海結は、子供の頃ここに住んでたんだっけ?」


「うん。」


「……ここマジで穴場スポットでさ、1人になりたい時は良く来るんだよ。」


「…へぇー、1人になりたい時とかあるの?」


「っお前…本当に失礼な奴だなぁ?」


「……本心を言ったまでだよ?」


「嘘偽りないお前のそーゆーとこ俺は気に入ってるよ」


「え、何それ……」


「ってことで、今から写真撮るから!自然に歩いて?」


「はい!?わ、私まだモデルやるなんて言ってな…」


「今日はそーゆーのじゃねぇーから!普通に撮りたくなったんだよ」


「っ、い、意味わかんないよ!」


「じゃあ、適当にはしゃいでくださーい」


「え?そ、そんなの、どうしたら??」


「好きに動いてみて?俺はちょっと離れたとこで居るから。」


「………分かった。」



何だか分からないけど、また写真撮られてるし
上手く乗せられているような気もする…。


波打ち際で、歩いたり走ってみたり
立ち止まって海の向こうに見える夕日を見たり
本当にここは懐かしい。昔を思い出す。










気付けばすっかり夜になっていた。



「……やっぱり、海結は写真に向いてるね。」


「え?えーっと、それはどっちの意味で?」


「モデル一択。」


「えぇーー!やだよー。私は撮る方が好きなのに。」


「じゃあ、海結が撮った写真見せてよ。」


「………。」


「嫌?」


「…下手でも笑わないでよ?」


「何?そんなこと気にしてんの?笑うわけないだろ?」


「本当に?」


「まぁそうだなぁー。笑わないけど、写真に対して俺は結構厳しいよ?」




「……じゃあ、勝負しよ!どっちが良い写真撮れるか!」


「はは。良いね。で?何の写真撮る?」


「海」


「……了解。そーだ、ハンデあげようか?」


「は?い、要らないよ!てゆーかハンデって何?」


「そーだな、例えば…俺は10枚しか写真撮らないとか?どう?」


「な、何で??そ、そんなの…圧倒的に不利じゃ…」


「そうか?」


「私が勝ったら?」


「……これあげるよ。」


「は?え?」



差し出されたのは、
私には到底手の届かないカメラ…。


「悪い話じゃないと思うけど?」


「そんな簡単に譲れる物なの?それは…」


「まさか…。これでも大事にしてきたカメラだからね。簡単には渡さない。負ける気なんて無いよ?」


「……分かった。それで?私が負けたら?何をあげれば良い?」
















「……モデルになって欲しい。」


「は?」


「最初からそう言ってるだろ?」


「………分かった…。私が負けたら、モデルやるよ。」


「約束な。」