別のお話。


「少なくても空よりはしっかりしてるよ。朝だってちゃんと起きるし」

「俺だって起きてるし。布団から出ないだけだし」

「屁理屈ばっかり」

「海、空。いい加減にしなさい」

変わらない。

いつもと同じ。

平穏で当たり前の、いままでと何一つ変わらない朝。

確かに心に穴は空いている。

足りない。

俺のいつもにはいつの間にかシヅキも含まれていた。

シヅキがいないなら、それはもういままでのいつもとは違う。

でも不思議だ。

心には穴が空いているのに。

まだ全然悲しみで涙が流せるのに。

それでも……、大好きな人が思い出せる。

声も姿も思い出も。

それだけで胸の奥が温かい。