別のお話。


※※※

ーピピッピピッ

目覚ましが鳴ってる。

起きないと。

カーテンのない窓から朝日が差し込んでいて、眩しさに目を細めながら聞こえてくる声を待った。

だけど「おはよう」の声が聞こえなくて、布団に重みを感じなくて、シヅキはもう居ないのだと思い出す。

本当に居なくなっちゃったんだな。

だけど覚えてる。

忘れてない。

それだけでもう涙は溢れなかった。

遮光カーテンを閉める。

寝巻きから洋服に着替える。

それから今日を始めるために階段を降りた。

「春兄おはよう」

「おはよう」