別のお話。


「もちろん」

そう言って微笑むシヅキに胸の奥が騒めく。

だけどそれが何なのか、その時の俺には分からなかった。

「家族かぁ」

いまのは多分独り言だろう。

シヅキ自身声に出ているのには気づいてなさそうだ。

家族。

窓の外を眺めているシヅキをチラチラと盗み見ながら、シヅキの言葉を繰り返す。

シヅキにも姉妹はいたのだろうか?

どんな友達に囲まれてどんな生活を送っていたのだろうか?

いまから向かう場所はシヅキにとってどんな場所だったんだろう。