「春人、こっちの手離して」 言われた通り左手をハンドルから離すとシヅキの右手が添えられた。 「何?」 「反対の手でハンドル持って。 ほら、ね?こうしてると手を繋いでるみたいじゃない?」 俺の左手とシヅキの右手がそれぞれハンドルを握る。 握っているのはハンドルでお互いの手じゃない。 だけど一人で押すよりもバランスが取りづらい自転車を二人で押して歩いてみると確かに繋がっているような感じがした。 「怖いのか?」 「いまは大丈夫。ただ、物を挟まないと繋げないから」