「いい人でしょう。凪斗くん」

京さんが帰ったあと、入れ替わりで隣座ったおばちゃんが言う。


「うん! 前から知り合いだったの?」

「いーや、去年あったばかりなの。1月の真ん中くらいだったかねぇ、おじいちゃんが元気な時にね、たまには外食するか―って言って連れて行ってくれたところが凪斗くんの定食屋さんだったの」

「そうなんだ!」

「そうよー。それでね、家はここでも特に田舎の方でしょう? 賑わってる地域の方まで移動が大変ねっておじいちゃんとお話ししてたら

『うちは配達もやってますからいつでもご利用くださいね!』

って凪斗君が教えてくれて、そこから仲良くなったのよ」



おばあちゃんは、嬉しそうに、そしてちょっぴり寂しそうに微笑む。



おじいちゃんは去年の冬、イキナリ天国へ行ってしまった。





おばあちゃんとおじいちゃんは、10歳差で、おじいちゃんは80歳。いつも「俺が先に死ぬんだ、だから生きてる間はばあちゃんをずっと幸せな気持ちにさせてやる」って言ってた。



本当にその通り、おじいちゃんといるときのおばちゃんは幸せそうだった。


「おばあちゃん」


「なぁに?」


「お土産持ってきましたっ! おじいちゃんも大好きな羊かんです!」


そう言ってカバンから羊かんを取り出しておばあちゃんに渡す。

「あらぁー! 嬉しいわぁ。ありがとね」



パッと表情が明るくなって、羊かんを眺めるおばあちゃん。




私も、おばあちゃん達みたいに、相手の幸せを願い続けられるような、そんな人に出会いたい。



そんな風に思って、ふと頭によぎったのは、出会ったばかりの京さんの顔だった。