「ごめんなさい!ごめんなさい!」


急いで蛇口をひねって水を止めてから、京さんへ駆けよる。


びしょびしょだ。

どうしよ、どしよ!?


「大丈夫だって、このくらい」

京さんが何か言ってるけどテンパって頭に入ってこない。

顔に当てなかっただけまだマシかな? なわけない、かけちゃった時点でアウトだよ。


あっ、そう言えば私ハンカチ持ってきてるじゃん!


ジーンズのポケットからハンカチを取り出して、申し訳程度に腕や手を拭く。

あと、あとは、首元。

京さんの着けていた白いTシャツは、ところどころ濡れて体に張り付いていた。


あーもう! 私のバカ!


なんでホースもったまま振り返っちゃうかな、ほんと、も「えと、夢結ちゃん?」


「はい! ごめんなさい!」


名前を呼ばれて、パッと勢いよく顔をあげると。






お互いの鼻の先がくっつきそうなくらいの距離だった。





「あっ、」


驚いて動けない私を、

京さんは困ったように眉毛を下げて見る。




「ちょっと近い、かな」




ほっぺたが、いや、全身がカァァっと熱くなる。


「あっ、あの、えと。あの」



私の手は、京さんの首元と、少し濡れて透けた胸に置かれていて。


わ、わたし、やっぱり、大バカだ!!!!



「ありがとう。でも本当に大丈夫だから」


ニコッと優しく笑って、私の両肩に手を置いて少し距離を開ける。


もう、もうやだ。


本日2回目。


穴がったら埋まりたい……。ていうか、誰か埋めて。


よろよろと京さんから離れて、隣へ座りなおす。恥ずかしくて、京さんの方が見れなくて。お庭の方に体を向けながら俯いていると、頭にポンっ、と何かが触れて、温もりが広がる。


「そんなに落ち込まない。俺はほんとに大丈夫だし、気にしてないから」


京さんの手は、大きかった。




ほんとは、それだけじゃないんだよ。

すっごくドキドキしちゃったからなんだよ。


「夢結ちゃんはいい子だって分かったし」

そう言う京さんに答えたのは、

「でしょう! 自慢の孫なのよ」

台所から、冷たい麦茶とスイカを持ってきたおばあちゃんだった。