縁側に座っていったん靴を脱ぐ。そして居間まで行って、壁の方にあるお仏壇の前に立つ。

そこには、去年亡くなったおじいちゃんの写真が置いてあって。


(久しぶり……。遊びに来たよ)

目を閉じて手を合わせて、挨拶をする。
夏休みに「おばちゃんのところに行きたい」って言ったはこのことが理由でもあるんだ。

優しくて、あったかくて。お茶目なところもある素敵なおじいちゃんだった。

おばあちゃんとおじちゃんは凄く仲が良かったから、お葬式の時の悲しそうなおばあちゃんを見てるとなんだか心配になっちゃって。


1人で寂しい思いをしてるんじゃないかな……とか。

最近やっと元気になったみたいで少し安心した。


挨拶を終えて、縁側の方に戻ろうとすると、そこに座っていた京さんと目が合う。


「夢結ちゃん、おじいちゃんのこと大好きだったんだね」

「へ?」

「いや、目閉じながら少し微笑んでたから」


「なっ、見てたの!?……京さんのヘンタイ!女子高生の無防備な姿じっと見るなんて~!」

「ごめっ……て、夢結ちゃんだって俺の無防備な姿見てたろ。運転中のさぁ」

「30代の男の人と女子高生は違うんです~!」

「それはズルいよ……」


これは照れ隠し。
だってなんだか嬉しかったから。

私に興味持ってくれてたことが。


縁側に戻って、京さんの隣に腰を下ろす。
庭を見渡すと、少ししおれている花達が目に入った。

そっか。おばあちゃん、あんなに元気に動いてるけど、おばちゃんだもんね。この暑さでお庭仕事するのは大変だ。


……うん、お手伝いしよう。

私はもう一度靴を履いて、ホースが繋がれている外の蛇口をひねった。



太陽の光を反射しながら勢いよく飛び出した水は、とってもキラキラして綺麗だ。


花にかけると、周りが明るくなった気がした。



__ブンッ

「ひゃ!?」

耳元で嫌な羽音がする。


けど一瞬だった。

良かったぁー。そう、思ったその時。

__ブゥーン‼


顔の前を黒と黄色のアイツが通過していく。


「きゃぁあーー!?」

反射的に手に力が入って、逃げようとホースを持ったまま振り返る。


「うわっ!?」


「えっ。あっ、あぁぁぁぁぁっ!!?」


私が握ったせいで勢いが強くなったホースの水は、お庭の後ろ、つまり縁側で座っていた京さんに、見事にヒットした。