「ムサシじゃないか、見かけによらず、すごいんだ!」
「ムサシ……? …………。オー、ヒーイズ、ワンダフォー!!」

コイツ、絶対わかってねえな。
うやうやしく拍手する男を無視して、「それで?」と促した。

「ああ、そうだね。それで、私はあと一押し! というところまでいった……。だが、結果、彼が勝利し、私は囚われの身となった」

「囚われ?」
「魔法で封じ込められてしまったんだ。呪いの谷にね」
「呪いの谷……」

テレビゲームでしか聞く機会のない、ファンタジックな名前に、オレは歓声を心の中であげる。

「そこのね、いけにえになりそうだったんだ。あと数時間、ってところで君に呼び出された。感謝してるよ」

……いけにえって……。
もういっそ、いけにえになってくれてた方がよろしかったのでは、と思いつつ、オレはどうも、と言い返した。