しかし風の刺客はここからが本番だった。
少し進み始めたところで勇者は先程までとの道の違いに気付く。
大通りという事もあり車通りがあるのだ。
普段よりは少ないとはいえそれでも決して少なくはない。

「痛っ!?」

こんな所にこんな刺客がいるとは。
車のタイヤによって跳ねた小石が勇者目掛けて襲いかかってくる。

最初は軽快に避けていたがそれにも限界がある。
風によって軌道は変えられ段々とかすり傷が増えてきた。
そこで勇者は秘密兵器を使う事を決意する。

無いよりはマシと家を出る前にかぶってきた帽子に手をかけた。
それをグローブに見立てると石を次々とキャッチする。
こんなところで昔野球チームに所属していた経験が役に立つとはな。
勇者は一気に走り出した。

途中で倒れたゴミ箱を飛び越えて、帽子にたまった石を倒れそうな登りの下にお供えし、飛ばされてきた看板を華麗にかわしながらようやく勇者はミスタードーナツに辿り着いた。