「え……」

昔って、

「田舎町に住んでた時、引っ越す前にあげただろ?」

それって──、

"だからその時まで、笑顔でいてね。あさかちゃん!"

"うん!はっくんもだよ。"

「はっ……くん……?」

一気によみがえる記憶。

「そうだよ。昔よく一緒に遊んでただろ。」

「うそ……」

衝撃的な事実に言葉を失う。

「俺は最初から気づいてたよ。大人っぽくなったけど、あの時と変わらない"あさかちゃん"だって。」

「最初って、あの公園の時から?」

「そうだよ。声をかけるまでは気づかなかったけど、目覚めた亜砂果を見て分かった。」

そんなに前から隼太と私は出逢ってたんだ。

「どうして教えてくれなかったの……?」

そしたらもっと早く思い出せたかもしれないのに。

「自分で気づいて欲しかったんだよ。俺のことも、また会おうって約束のことも。」

「だけど……」

中々思い出さない私を見てずっとじれったかったんじゃないの?

「でも今やっと言えた。亜砂果にちゃんと俺のこと知って欲しかったから。」

「隼太の事?」

「そう、俺の事。」そういうと彼は私の方を向き直ると、一呼吸おいてから、
「俺、亜砂果にずっと隠していたことがあるんだ。」と、ゆっくり語りだした。


ずっと私たちが避けていた真実の扉。
その扉が少しずつ開き始めた予感がした。