「でも、他の人が同じヴァイオリンを作ればいいんじゃ」

「ストラディバリウスの音色の秘密は、現在でも謎に
 包まれていて、最新技術で似たような材料を使っても、
 音を再現できないの。
 それにヴァイオリンは製作後、200年から300年経ってから
 最高の音が出るから」

「ミステリーだね」

「そのミステリーが魅了するのよ」

「何となく、高額の訳が分かったよ」

「でしょう」

しばらくの無言の後、彼が真剣な顔をした。

「君のヴァイオリンも、君自身も愛している、
 君の両親の事も知って、周りも全て、大事にしたいと思った。

 本気なんだ、

 いつまでも待つつもりでいたけど、
 こうして一緒にホテルに来てくれると期待してしまう、
 君の心に、俺はいるだろうか」