そう言いながら、思い出して涙ぐむ。

「このヴァイオリン700万ぐらいで、
 ストラディバリウスには到底及ばないけど、

 私の中では、ストラディバリウスより、
 ずっと価値があるヴァイオリンなの」

「良い両親だね」

こくんとうなずく。

「それにストラディバリウスは600挺程しか
 残っていないの、世界的な演奏家に
 持ってもらって、音色を世界に伝えて欲しい」

「600挺?でもまた作れば・・・」

「それは無理ね」

「なせ?」

「ストラディバリウスさんが作った弦楽器を
 ストラディバリウスと言うの、彼は亡くなっているから」