そうして、演奏していると、小さな男の子がやってきた。

「ガオレンジャー弾いて」

母親が「こら」と言うのを気にせず、男の子の前に屈みこむ。

「ガオレンジャーね」

「うん、すごくかっこいいんだ!」

「分かったわ」そう言ってスマホを取り出し、
ユーチューブでガオレンジャーの曲を呼び出し、2度聴く。

「じゃ、演奏するね」

「うん」

ヴァイオリンから流れるのはガオレンジャーのメロディ。
たった2回聴いただけのはずなのに、その音楽は完璧だった。

「すこい!すごい!」

「ほら、ありがとう言いなさい」

母親に促らされ、男のは素直に「ありがとう」と言った。