いつのまにか中庭の桜の木も新緑に色づき、彼も中庭に来なくなった。
どうしたんだろう。
もしかしたら、もう学校には来てないのかも。
でも私には関係ない。
なんて言いながらも私は時々、中庭を訪れていた。
「春香、また中庭に行くの?」
「うん、あそこ静かで居心地がいいの」
私は昼休みにお弁当を食べ終え、再び中庭に来ていた。
しかし彼の姿はない。
もしかしたら、あの人に会うことはもうないのかも、なんて私は新緑に染まる桜の木を見上げていた。
「何やってんの?」
と後ろから聞いたことのない男の人の声。
振り返ると、そこには真先輩の姿があった。
今まで来てなかったのに。
「あ、ごめんなさい」
私はそう言って中庭を出て行こうとした。
「お前、入学式の日にこっち見てたやつだろ」
「え......」
「それにいつも教室からこっち見てるだろ」
な、なぜバレてる!?
こういう時ってなんて言えばいい?
見てましたって正直に言えばいいの?
それとも見てないですって言えばいいの?
私にはよくわからない。
「どうして俺のこと見て......」
「悲しそうだったから」
「は?」
「あなたが悲しそうにこの桜を見てたから」
それだけだったのに、なんであの時......
「お前、いつもここに来てるのか?」
「え、いえ、時々」
「そうか」
そう言うと真先輩は中庭を出て行った。
なんなの?
っていうか......
心臓が破裂するかと思った。
なんで、こんなにドキドキしてるの?
これってどうすれば.......