寒い。
今日の気温は0度近いとか。
きっと寒い地域の人たちからしたら普通なのかもしれないけど。
「みんな来たか」
「うん」
「じゃあ行こうか」
私たちはお墓に行く前に桜さんの家へ行くことにした。
3人とも気まずく、どこか悲しそうだった。
けれど桜さんのご家族の方は私たちにとても親切にしてくれた。
「みんなが来てくれて桜も喜んでるわ、ゆっくりしていってね」
そう言って桜さんのお母さんは優しく笑った。
それからみんなは桜さんとの思い出を話し始めた。
楽しそうに。
昔の4人のエピソードは面白くてちょっと羨ましかった。
すると、桜さんのお母さんがみなさんにと言って3人に、そして私に桜さんからの手紙を手渡した。
私にまで?
そっと手紙を開いてみる。
とそこには文章が書かれていた。
「真の彼女さんへ
元カノの私からのアドバイスを書こうと思います」
なんだろう?
『真は本当は弱くて泣き虫です。
強がってかっこつけてるだけ。
だから甘やかしてあげてください。
あ、でも甘やかしすぎはダメ。
真は1つのことに集中すると他のものが見えなくなる癖があるので注意。
勉強は苦手、特に数学。
好きなものは......』
そこにはたくさんのことが書いてあった。
私の知っている真先輩から知らないところまで。
なんだかアドバイスじゃなくてプロフィールと取扱説明書みたいな感じだった。
そして最後に
『真が選んだってことはきっと素敵な子なんだよね。
私は残念ながら真を幸せにすることができませんでした。
だから、あなたには真のことを幸せにしてあげて欲しい。
私の大切な人をよろしくお願いします。』
そう書いてあった。
気がつくと涙が溢れていた。
桜さんはとても素敵な人だ。
自分のことじゃなくてみんなの未来のことを願っていたなんて。
周りを見ると、全員涙を流していた。
きっと桜さんは生きている私たちに向けて前向きなこと言ってくれているんだろう。
本当にすごい人。
私はきっと桜さんのような素敵な人にはなれないだろう。
だけど私は私のやり方で必ずみんなを真先輩を幸せにしてみせる。