私は山本春香。

今日は高校の入学式。

ブカブカの新品の制服はなんだか、かっこ悪い。

入学式も無事に終わり教室へ。

「みなさん、入学おめでとうございます」

担任の先生のあいさつとみんなの自己紹介。

これで私の高校生活はスタートした。

今日は午前中で終わり。

私は荷物をまとめて帰ろうと席を立ち上がった。

「春香ちゃんだよね?バス同じだから一緒に帰らない?」

そう声をかけてきたのは斜め前の席の鈴木夏実ちゃんだ。

「うん、いいよ」

そう返事をして私は荷物を持ち、2人で教室を出た。

早速、友達ができたみたいで嬉しかった。

私たちは好きなものの話をしながら廊下を歩いていた。

すると、ふと中庭にある桜の木が目に入った。

その桜の木の下には悲しそうに桜を見つめている男子生徒がいた。

誰も彼のことなんて見ていない。

夏実ちゃんも気づいていないようだ。

と突然、心臓が大きく跳ねた。

どんどん鼓動が速くなり、体が熱くなってきた。

なんなのこれ......

「春香ちゃん?」

ぼーっと中庭を見つめている私の顔を不思議そうに眺めている夏実ちゃんがいた。

「あ、ごめん。ぼーっとしてた」

「大丈夫?顔も赤いし......」

「な、なんでもない。帰ろっ」

と私は中庭から目をそらした。

「っ......」

一瞬、彼と目があった気がした。

私は速くなる鼓動を抑えながら、下駄箱へと向かった。