僕が彼女を初めて見た時のことはよく覚えてる。

天泣の日だった。
君は雨の中、顔を上げて空に向かって叫んでいた。
目を瞑り、大きく口を開け、苦しそうに叫んでいた。
僕はそんな君を綺麗だと思った。周りを気にせず、苦しみ踠き、上に行こうと頑張って翼を広げようとしている。そう感じたんだ。
でも不思議だと思ったよ。声が出てなかったからね。あんなに苦しそうに大きく口を開けて叫んでいるのに肝心の声が聞こえてこなかった。
僕は思った。君は人魚姫なんだと。