「え、え、なに?」

本人の了承無しに、髪を触り始めた私に少しの苛立ちをこめてか、葉那乃は自身の後頭部にある、私の手を払いのけるように手を振る。

「なんっかいも言うけど。自分で思ってるより、葉那乃、可愛いんだからね?その顔で18になっても彼氏つくらないとか言ったら、全国の非リアギャルに殺されるよ」

溜め息混じりに言えば、葉那乃は諦め、払いのける手をどかし、肩をすくめながら言う。

「だーかーら。昨日も言ったけど、私、恋愛に興味無いんだってば。葎が昨日言った、『モテる』とか、そういう単語、全然わかんなかったし」

私は、その言葉に大きく目を見開いた。彼女に見えているはずはないけれど。
かと言い、すぐに、元の大きさの目に戻し、思い切り溜め息をついた。

「...あのね、葉那乃?あなたの顔面偏差値は、67なの。実際自分の頭より顔面偏差値の方が高いんだからね?でもね。あなたの顔的にその髪型は、近寄り難い雰囲気が出るの。折角可愛らしい顔してるんだから、髪をあげなさい」

後半説教ぽくなってしまったが、このくらい言わないと、わからない。

「......もう、わかったから。とりあえず、髪、離して」

その物言いは、まるで、こちらが折れてあげるしかないというようだった。
私も、さすがに諦め、葉那乃の髪から手を離した。

...そこで。

「喧嘩は終わった?」