続けた。

「再生不良性貧血って言って、現時点では治療法が見つかってないの」

言葉にするだけで苦しくなる。だが、それは真実だ。私は今、事実を彼に伝えている。

「時々、全身に酸素欠乏の症状が起こって、今回みたいに倒れちゃう」

私は俯いて、話し続ける。遥の真っ直ぐな瞳に耐えられなくなったからだ。

「見た目だけで病気っていうのはわかりにくいの。......だから、余計に言えなかった。もし私が告知したとして、遥はきっと私のために泣いちゃう。世界一大好きで、誰よりも愛してる、そんな遥の泣き顔なんて、見たくないの。たった一人の最愛の人を笑顔に出来ないなんて、愛してるって言う資格なんかないから...」

言い終えて、何故かまた泣いた。
持っていた婚姻届の紙に、透明なしずくがポタリ。


涙を出そうなんて、考えてない。

でも、遥は


「......何で、泣いてんの」

ぼそり、と呟いた。それは、独り言なんかではなく、私への質問として取れた。
私はその言葉に反応し、少しばかり顔を上げる。



そうしたら、遥と目が合った。


「俺だって、葎にそんな顔させたくない!」

びっくりした。




大声で、言うもんだから____。