「...」

見慣れない天井。

「...」

ツンとした、独特な匂い。
半身を起こして、辺りをゆっくり、ぐるりと見回す。

「.........遥」

その中で、私は遥と目が合った。いや、そもそもいたのか。
遥は今にも泣きそうな顔で、言う。

「...何で、言ってくれなかったの」

違う。私、そんな顔をさせたいんじゃないんだよ。

声が、あまりにも切なくて、か細くて、寂しげで、私は俯く。
遥の言葉で、ああ、ばれてしまったと、痛感した。

「......」

「葎」

「...」

「葎」

「...」

「......葎。俺、葎のこと、好きだよ」

「...っ」

やだ。変なこと言わないでよ。

「大好きだよ。葎の笑顔も、葎のことが好きと思える自分も。俺さ、葎に、誇れる程の感動、沢山もらった」

「......っ!」




そう。温かいものが、頬を伝っていたのだ。

「だから、ね。今度は俺が、葎に誇れる程の感動をいっぱいあげる。葎の心は、いつも俺で埋まるようにね」