蓮と華乃ちゃんとは別のクラスだから、音楽の授業では会うことはない。
そう思うと心の底から安心して、ホッと息をついた。
音楽の時間が終わると、廊下の壁に寄りかかった見知った姿を見つけた。
「…華乃ちゃん」
そう言うと、華乃ちゃんはこちらに振り向いて、思いっきり私をにらんだ。
うー、やっぱり怖い!
なんで、こんなに睨まれるんだろう。
「ねえ、まなかちゃん。少し話があるの。ここでいいから聞いてもらえる?」
となりにいたみなみちゃんが、聞かなくていいよと囁いたけど。
「すぐに終わるならいいよ」
と、了承した。
なんとなく、言いたいことはわかってたから。
「…蓮に近づかないでくれない?」
それに対して大きな驚きはなく、やっぱりかと密かに思った。
でも、こういうのって普通人がいないところで言うもんだよね?
あたしとみなみちゃんが音楽室から出るのは確かに遅いけど。
音楽室にはまだ人は残ってる。
男子だっている。
蓮にさえ、嫌われなかったらいいのかな。
蓮に告げ口されたら、とか考えないのかな。



