「ねえ、まなか。本当に、蓮とは幼馴染のままなの?」


「え、なんで?」


選択授業である、音楽の教科書を持ったあたしは不思議だった。


「だって蓮、イケメンじゃん。おまけに性格良くて勉強できて、足速いじゃん」



「運動神経いいっては言わないのね」



「だって蓮、球技ダメでしょ?あんなに出来なくて、運動神経いいなんて言えない」


あんなにって言うのは、この前蓮がサッカーをしてたのをみなみちゃんと見かけたから。


あれは授業の時。



男女別に分かれてやる体育が、女子がたまたま早く終わって、残り10分くらいの試合をクラスの女子で見たんだ。



あたしは気づいたらとなりにいたような幼馴染だったから知ってたけど、高校で友達になったみなみちゃんのような子は知らない。



蓮、なんでも出来るってすごく評判良かったから、みなみちゃんたち女子に期待されてたんだけど。


「残念ってため息ついてたもんね」


「サッカーがあの下手くそじゃ、あたしは無理。そこが完璧すぎなくていいって言うこもいるけどね」



そうなんだー…。


やっぱり蓮のファン多いよね。


中学の頃からなんとなくいるよなあって、思ってきたけど、ここにきて急に増えた気がする。



「で?どうなの?」



「どうなのって、蓮のこと?」



「それ以外に何があるの。好き、とか思ったことないの」



「好き、かあ」


みなみちゃんが目をキラキラさせてる。



可愛い!…じゃなくて。


好き?す、き?



「そうよ!ないの?2歳から一緒なんでしょ?」



「…確かに2歳から一緒だけど、異性として、蓮を好きになったことないよ」


「ええ?嘘だー!あるでしょ、きゅんとか」



きゅん…?


「まずそれがよくわかんないの」


きゅんって、なに。きゅんって。


「はあ?あんた初恋まだなの?」


「うん!」

元気よく、そう答えたら、みなみちゃんにはあとため息をつかれた。


え、もうみんな初恋終わってるの?



「みなみちゃんの初恋っていつ?」


「あたしの初恋は3歳でとっくに終わってるわよ」

「そうなのー?ねえね、どんな人?」


「幼稚園内の人気者。蓮みたいなやつだったよ。って、今はあたしのことは関係ないでしょ」


「いいねえ、あたしもそんな恋したいなあ」



「蓮にはそんな気持ちにならないの?」



「さっぱり。蓮はねえ、安心するの。そういうきゅんとかじゃなくて、なんていうの?あったかい、かな」


それに……。