「あ、田中龍也(たなかたつや)です。よろしく」


そんな名前だったんだ。



クラスメイトだと、みなみちゃん以外の人の名前、あんまり覚えてないから。



今知った!



「あー!聞いたことある!今うちのクラスでも話題なんだよ〜。カッコいい男の子だって」



あ、それでペア決まった時にクラスの女の子たちにいいなあって羨ましがられたんだ。




たしかにイケメンなのかもしれないけど、誰もが認めるイケメンの蓮を昔から見てるあたしにはあまり響かない。




蓮と田中君は違うタイプのイケメンだ。




蓮は、目鼻立ちがハッキリしてるカッコいい系イケメンだけど。


田中君は優しいふにゃっとしたイケメン。

あれ、褒めてないかも。



性格はどうか知らないけど、顔だけだったら蓮の方がカッコイイもん。



「そんなことないですよ」



「あ、敬語なしね。同い年なんだから」



「あ、…う、うん」



「田中君は、立候補?」



「そう、文化祭の準備とか楽しそうじゃない?」



「あたしもそうなの!実行委員とかやるの好きなんだ。だから、蓮にもさせちゃった」



ふと、華乃ちゃんの向こう側を見ると、つまらなそうに頬杖ついている蓮がいた。



そっか、おつかれ。



蓮もやらなくていいなら、準備とか一切したくないもんね。



だるいとか、いうタイプ。



「ほんと楽しみ。何するの?」



黒板に書かれてる役割を見て、華乃ちゃんが田中君に聞く。



あたしを挟んで2人が会話するから、なんかあたしはいづらい。



「俺は…」


だめだ。


あたしこの会話に入れないよ、入りにくいよ。


「あの、席交代する?」



とうとう、そう切り出すしかなくなった。



だって無理だもん、ここにいるの。