「蓮(れん)!」




ガヤガヤとした廊下に、大好きな後ろ姿を見つけた。



「まなか、…どうした?」


「どうしたって、見つけたら声かけるのが普通でしょ?」


心配そうに声をかけてくれたから、大したことはないと首を振りながら答えた。


「いや、まあそうだけど。……前に、色々あったから」


言いにくそうにあたしから視線をそらした蓮に、そうだけど。と漏らした。


その話は嫌いだ。


それを蓮もわかってるから、それだけで話は終わった。


「あ、あのね今日いいことがあったの!」


「なに?」

蓮はいつだって楽しそうに話を聞いてくれる。


ほら、今だって。


先を促すように笑ったでしょ?