千愛が……他のやつに触れられているのを見ていられない。

一度も目を合わすことなく、二人は教室を出て行く。

千愛が流した涙を思い出す。

好きで、好きで。

長い間持っているその想いが伝わらないうちに、

愁が千愛の心に入り込んだのか。

……泣きたいのは、俺の方だ。

俺は壁においた手の甲に自分の額をあてて、ぐっと目を閉じた。