数日後の昼休み。

私は、木村先輩にあのチャットの返事をまだ返せないでいる。

次の授業が教室移動のため、廊下を歩いていると、運がいいというか悪いというか、目の前から木村先輩が歩いてきた。

ここで踵を返したら、絶対に変に思われるよね!?


「香帆ちゃん……!」

「……っ」

名前を呼ばれて、思わず逃げ出してしまう私。

木村先輩に、あのチャットの返事をしそびれたっきりなんだよね……。
会わす顔がないんだってば!

「捕まえた……。香帆ちゃん、ちょっと話がしたいんだけど……」

言うと思った。

「はい……」

もう、逃げられない。

「なんで返信くれないの?」

「…………」

「香帆ちゃん……?」

「私から返信もらおうなんて10年早いです」

「えっ……」

さすがに、言いすぎた。

ほんの遊び心で、なんて言い返してくるかな?って思って口から出た言葉だったんだけど。
木村先輩から返ってきた言葉は、またもや予想外だった――。

「分かった。じゃあ、10年待つよ」

……!?

今、なんて言った!?

“10年待つよ”?

「な、なに言ってるんですか……嘘つかないでください! 10年後なんて忘れてるくせに」