ある日の昼休み。

私、今澤香帆(イマザワ カホ)は教室で友達の竹中真菜美(タケナカ マナミ)とランチをしていた。
すると、廊下から悲鳴にも似た、黄色い声が聴こえてきて……。

「きゃ~! 俊く~ん!」

「木村センパ~イ!」

また、あの先輩が通ったのか……。

“木村俊先輩が出没するとこに、女の声あり”

と言っても過言ではない。
見た目がチャラいがゆえに、周りに集まる女子の数が半端ないのだ。

……どこがいいんだろう?

「なんか、相変わらず凄いね……れいの木村先輩」

「ね。あんなチャラい人のどこがいいんだか……」

真菜美も木村先輩に興味がないうちのひとりだ。
私も真菜美も、廊下は無視してお弁当を食べ続ける。

すると、一緒に食べている浅木弘人(アサギ ヒロト)が面白そうに聞いてきた。

「ふたりは興味ないんだ?」

「私はないね~」

「私も~」

「ふ~ん……そんなもんなんだ」

「香帆も私も苦手なのよ、あぁいう人。ね? 香帆」

「う、うん……」

実は何回か告白されてる、なんて言えない……。
そのたびに断ってるけど、諦めてくれないんだよね……先輩。

なんで私なんかに告るんだろうっていつも不思議に思ってる。
毎回、断ってるのに。