これは都合のいい夢じゃないかと、
まだ目覚めてないんじゃないかと。

「…ねえ?恵理奈。
俺、これでも緊張してんだけど。
何か言ってよ。」


「…わたし、妊娠、してるって、
ど、して?」


「分かってたよ。
顔色悪すぎだし、急に痩せたし。
ご飯食べれてないみたいだし。
なんか、ずっと悩んでる感じだったし。」


それに、と付け足す。

「いつも、何か言いたげなのも分かってた。
俺から離れようとしているのも。
だけど、理由が分からなかったんだ。

恵理奈は、どんなにくっついても
抱きしめてひとつになっても
どこか、遠くに感じて、いつも危うかった。

もしかしたら俺のことも、
断れなくて、
この関係を続けてるんじゃないかって。

俺も不安だった。」

「…紘都さん。」

初めて聞く。彼の本音。
初めて見る、不安そうな崩れそうな表情。




「だけど、今分かったよ。
俺と、不倫してると思ってたんだね?」


「…はい。」



「俺、もう別れて3年も経つよ。
指輪もしてないでしょ?」


と、笑う彼。

「ねえ、恵理奈。
俺の話。聞いてくれる?
その次は恵理奈の番ね。」