1綾瀬まはるside
忘れられない。
あの日。
あの夏。
あの人。
名前すらしらない。
知っているのは4中だったことと、バスケ部だったことそれだけ。
白くて少しきゃしゃな腕、あたしとたいして変わらない背丈、柔軟剤の匂い、目にかかるぐらいの前髪、
すべてすべて忘れられない。
「おい まはる」
入学式に向かう途中後ろから聞きなれた声がする。
「なんだ隼人か」
幼馴染の泉隼人（いずみはやと）。
「なんだってなんだよ
てかなんだその頭」
頭．．．？
「なにってなにが？」
「ね・ぐ・せ
前髪立ってんぞ」
うそ！？
やっば急いでて鏡もみてなかった！
しかも隼人なんかに言われるなんて最悪！！
急いで年季の入ったくしで前髪を直す。
これももうそろそろ変えなくちゃな。
これは小6の誕生日に隼人からもらったくし。
たしか隼人から初めてのプレゼントだったかな？
一緒に鏡もついていて便利です気に入っている。
少しぐらいは女子力あげろとかいいながらくれたんだっけ？
てきとーに買ったとか言ってたけどそのあと隼人のおねーちゃんから「一時間半もこの買い物に付き合わさせたんだよー」なんて言われたのも覚えてる。
なんかいっつも冷たい隼人が女物のコーナーで一時半も悩んでたなんて考えるとちょっと可愛いななんて想って手放せない。
「なにしらないのー？
最新の髪型なんだから
バスケバカの隼人は知らないだろうけどねー」
「おま．．．
言い訳痛過ぎ」
「うっさい！」
もーまたあたしのことばかにして！
ほんとムカつく
「お前今何時かわかってんの？」
え今はえっと．．．
「やっば！
入学式そうそう遅刻しちゃうじゃん！」
どうしよう
このまま歩いてたら間に合わない
あっ
ラッキー
あたしは隼人が乗っている自転車が目に入った。
「じーーーーーー」
わかりやすく見つめアピールをした。
「なんだよ、乗せてやんねーぞ？」
「え！ 酷い！」
「かっこいいかっこいい隼人様お願いします
はい、言ってみ？」
うぅ こいつ調子に乗りやがって！！
「かっこいいかっこいい隼人様お願いしますー（棒）」
「おい！
もー乗せてやんねー」
「あーー
それはだめ！！
かっこいいかっこいい隼人様お願いします！！」
「よろしい」
勢いよく自転車の後ろに飛び乗ったあたし
「おもっ」
なっ！？
思いっきり隼人の足をけってやった。
「は？なんか言った？」
「いってぇ
なんでもないっす」
「よろしい」
こんな会話があたりまえ
隼人は冷たいけどいいやつだ。
あたしが怪我してバスケできなくなって1人で落ち込んでる時も隼人だけは共働きの親の代わりに毎日お見舞いきてくれて不器用に励ましてくれる。
あたしの大好きなお菓子もってきてくれたり怖くて不安になった時はあたしが眠るまでそばにいてくれたり。
隼人はいつのまにか背だってグンって伸びて中学の時は一部の女子に騒がれてたりもしたな。
あたしには全然わかんないけど（笑）
でも隼人のことは大好き。
あっ、もちろん幼馴染としてだよ？
こんなにいい幼馴染なんていないよ。
私ってどんだけ幸せなんだろ。
隼人のおかげでなんとか遅刻しないで学校に着いた。
クラス分けの紙で自分の名前指でなぞりながらを探す。
「綾瀬まはる綾瀬まはる綾瀬まはる．．．．．」
「1-3、俺と一緒」
「ほんとだ！あった
また隼人と一緒じゃん
これでえっと．．．」
「12回、幼稚園いれたら12回連続」
え！！
なんか隼人とは縁があるっていうか、ふつうにすごいね
「隼人きゅんこれって運命？」
「あほか」
いたっ
ちょっとふざけたかだけなのにデコピンされた
ひどい
教室の席の席は．．．名前順か
「げっ
また隼人ととなりじゃん！」
泉は男子の3番で綾瀬は女子の3番
「げってなんだよ
わるかったな俺で
てかすぐ席替えすんだろ」
「でも隼人の隣だと授業中寝ててわかんなくても教えてくれるしね！」
「おー
みんな席つけー
初ホームルームはじめっぞー」
え！？
あれが先生？
なんか若い。
「俺はこのクラス担任の天宮日向（あまみやひなた）だ
一年間よろしくな」
「せんせー何歳？」
一人の女子が聞いた。
「24だけど若いと思ってあんまりなめんなよ？笑」
「先生かっこいいー」
「彼女いるのー？」
などクラスの女子が騒いでいた。
入学式が終わると二週間後に控えた『クラス交流オリエンテーションキャンプ』略してオリキャの話になった。
毎年恒例でクラスごとに一泊二日の泊りで行うらしい。
今からその班決め＆教室の席をくじで決める。
「自分のひいた番号のとこに席移動させて各自トイレ休憩はいれー
次の時間には自己紹介やるからなー」
えっとあたしは女子の20番だから．．．窓側の1番後ろだ。
あ
「まじかよ」
隣は隼人。
「隼人があたしのことだーいすきなのはわかったけど席まで隣ってどんだけ好きなの！！」
「はぁ？
ばかじゃねーの
俺のことだーいすきなのはまはるの方だろうが」
「ちがうし
ばーかばーかばーーーーか
べー
え．．．」
その時目に入ったのは紛れもなくあの人。
忘れたくても忘れられないあの夏の。
「なにー？
そんなに俺のこと見つめちゃって
まさか俺に惚れちゃった？
俺代永蓮（よながれん）
でもごめんね俺はみんなのものだからさ」
なにこの人
ちゃっっっっっっら
こんな人があの人なわけない。
でももしそうだったら
「あの中学の時バスケやってませんでした？」
思いきって聞いてみる。
「あーやってたけど？」
え！！
「やっぱり！！
四中でしたよね！？」
「そうだけど
なにきみ俺のストーカー」
え．．．
なんでやっと会えたのに、ずっとずっと探してたのにまさかこんな人だったなんて。
再会への喜びよりも驚きと悲しみの方が何倍も大きい。
「まはる？
なにこいつ知り合い？」
私は幼稚園まで泣き虫だった隼人がどんどん自分を抜かしていくのが嫌だった。
だから隼人が始めたバスケも同じチームに入って抜かしてやろうと思って始めたのがきっかけ。
でもどんどん、どんどんはまっていって結果隼人が、とかじゃなくて自分がやりたいから、でバスケをするようになった。
そっからずっとバスケ一本だった私。
中学の大会の日引退先輩の引退試合だった。
後半ラスト1分で65対63で負けていた。まだまだわからない。
スリーポイントを決めれば逆転だ。
私は得意のスリーポイントをうった。
ドン
ピキ
「ピーー
レフリータイム
大丈夫ですか？
試合続けられる？」
審判が声をかけてきたのはわかる。
でも痛みで声が出ない。立つこともできない。
「ちょっとどいて」
その時体がすっとういて視界には綺麗な顔がうつった。
柔軟剤のいい匂い。
白くて少しきゃしゃな腕。
目にかかるくらいの前髪。
「あの人」はあたしをお姫様抱っこで救護室まで運んでくれた。
応急処置だけしてもらい病院へ
タクシーがくるまでずっとそばにいてくれた。
そのあとあたしがいなくなった後試合はボロボロに敗れたことしった。涙が溢れ出す。
「あたしのせいで．．．」
「あの人」はなにもいわない。
でも優しく背中をさすってくれる。
両親は共働きで病院へはこれない。
それを知ると
「一人じゃ心細いだろ？」
といいその人は一緒にきてくれた。
「もうバスケなどの激しい運動はできませんね」
検査後お医者さんにまず最初に言われた言葉。
お医者さんはそれからいろいろその怪我について教えてくれたが一切頭に入ってこなかった。
あたしからバスケが消える？
そんなこと想像できない。
あんなに泣いたのは多分初めての。
小さい子みたいに大声で泣きわめいた。
その人はやっぱりなにもいわない。
ただ優しく、優しく背中をさすってくれる。
そのあとすぐに隼人が入院に必要なものとかもってきてくれていろいろ話しているうちに「あの人」は消えていた。
名前ぐらい聞いておけばよかった。
お礼だってできてないし。
しっているのは四中ってことぐらいかな？
あとバスケをやっていたことそれぐらい。
しばらくしてリハビリ生活が始まった。
辛いことばかりだったけれど「あの人」にいつか会えると思うと頑張れた。
あった瞬間に思った。
これは運命だって。
トイレ休憩に入った後すぐに隼人に代永くんが「あの人」だったことについて話した。
なんぜかわからないけど隼人は不機嫌だった。
理由を聞こうと思ったけどトイレ休憩の次官も終わってしまいクラスの自己紹介に入った。
「名前順で男子から名前と趣味と一言ずついっていってなー」
「はーい」
なんか緊張するなぁ
友達できるといいな
そういえば代永くんバスケ続けてるのかなぁ
どんなプレーするんだろう。
けどなんであんなに変わっちゃったんだろ。
「ねーねーめっちゃかっこよくない？」
「ね！！背も高いし！
彼女いるのかなぁ」
女子がざわつきはじめた。
誰のことかなぁ
え！？
「泉隼人です
趣味はバスケっす
よろしくお願いします」
みんながかっこいいっていってるのってもしかして隼人！？
えーー
「ちなみに泉は主席だ」
天宮先生の一言でクラスの女子の目がハートになった。
そして自己紹介はどんどん進んていきあたしの番になった。
「綾瀬まはるです
趣味はまんがとかが好きです。
中学ではバスケやってました
高校ではマネージャーやろうかなと思っています
みんなと仲良くしたいのでよろしくお願いします。」
あたし変なこと言わなかった？
大丈夫かなぁ。
「鈴宮一凛（すずみやいちか）です」
あ、前の席の子だ。
前の席ってことはオリキャで同じ班ってことか。どんなこだろう
えてかめっちゃ美人！！
肌白いし顔小さいしまつげめっちゃ長い！！
「趣味はまんがとかが好きです
兄がバスケをやっていたのでバスケのマネージャーをやるつもりです
よろしくお願いします」
えめっちゃ共通点多いじゃん
仲良くなれるかな？今日はあと教科書配布で終わりだから早速次のトイレ休憩で声かけてみよっと。
「鈴宮さん？
あたし後ろの席の綾瀬まはるです！
まはるってよん下さい
鈴宮さんってめっちゃくちゃ肌白いしまつげ長いし目大っきいし可愛いですね
羨ましいなぁ」
「別に」
あれ？なんか思ってたのとちがう。
人見知りなのかなぁ
「バスマネやるんですか？
あたしもやろうかなって思っててもしよかったら今度見学一緒にいきませんか？」
「別にいいけど
あと敬語じゃなくていいき一凛でいいよ
まはる」
えなに今の「まはる」って破壊力やばいんですけど。
「ねーねーまはるちゃん、一凛ちゃん」
えぇーま、まままなまはるちゃん！？
「代永くん？
どうしたの？」
平常心平常心
「LINEやってる？
交換しよ！！
クラスLINEつくりたいしさー」
なんてフレンドリーな。
「はぁ？なに話しかけてきてんの？
キモいんだけど、誰があんたなんかとLINE交換すんだよ。」
えぇ一凛って男嫌い？
なんか意外。すっごくモテそうなのに。
「早くかせお前女子かよ
あと俺きもくねーよ」
「ちょっ勝手に取るんじゃねーよ
きもい、返せ」
「はい、追加完了
だからきもくねーよ
いつでもLINEしろよ
あ、まはるちゃんも
まぁいいやあとで泉からもらっとく幼馴染なんだろ？
あ、ねーねーゆいちゃんでしょー？
LINE交換しようよ〜」
チャラ。もう隼人とも仲良くなったんだ。
ん？んん？横で一凛が固まってる。
「おーい一凛？
大丈夫」
「っさった．．．くさった
携帯がくさった！！！！！
まじきもいなんなのきもいきもいきもすぎる」
一凛と仲良くなれたのはすっごく嬉しいけどこの班大丈夫か？
忘れられない。
あの日。
あの夏。
あの人。
名前すらしらない。
知っているのは4中だったことと、バスケ部だったことそれだけ。
白くて少しきゃしゃな腕、あたしとたいして変わらない背丈、柔軟剤の匂い、目にかかるぐらいの前髪、
すべてすべて忘れられない。
「おい まはる」
入学式に向かう途中後ろから聞きなれた声がする。
「なんだ隼人か」
幼馴染の泉隼人（いずみはやと）。
「なんだってなんだよ
てかなんだその頭」
頭．．．？
「なにってなにが？」
「ね・ぐ・せ
前髪立ってんぞ」
うそ！？
やっば急いでて鏡もみてなかった！
しかも隼人なんかに言われるなんて最悪！！
急いで年季の入ったくしで前髪を直す。
これももうそろそろ変えなくちゃな。
これは小6の誕生日に隼人からもらったくし。
たしか隼人から初めてのプレゼントだったかな？
一緒に鏡もついていて便利です気に入っている。
少しぐらいは女子力あげろとかいいながらくれたんだっけ？
てきとーに買ったとか言ってたけどそのあと隼人のおねーちゃんから「一時間半もこの買い物に付き合わさせたんだよー」なんて言われたのも覚えてる。
なんかいっつも冷たい隼人が女物のコーナーで一時半も悩んでたなんて考えるとちょっと可愛いななんて想って手放せない。
「なにしらないのー？
最新の髪型なんだから
バスケバカの隼人は知らないだろうけどねー」
「おま．．．
言い訳痛過ぎ」
「うっさい！」
もーまたあたしのことばかにして！
ほんとムカつく
「お前今何時かわかってんの？」
え今はえっと．．．
「やっば！
入学式そうそう遅刻しちゃうじゃん！」
どうしよう
このまま歩いてたら間に合わない
あっ
ラッキー
あたしは隼人が乗っている自転車が目に入った。
「じーーーーーー」
わかりやすく見つめアピールをした。
「なんだよ、乗せてやんねーぞ？」
「え！ 酷い！」
「かっこいいかっこいい隼人様お願いします
はい、言ってみ？」
うぅ こいつ調子に乗りやがって！！
「かっこいいかっこいい隼人様お願いしますー（棒）」
「おい！
もー乗せてやんねー」
「あーー
それはだめ！！
かっこいいかっこいい隼人様お願いします！！」
「よろしい」
勢いよく自転車の後ろに飛び乗ったあたし
「おもっ」
なっ！？
思いっきり隼人の足をけってやった。
「は？なんか言った？」
「いってぇ
なんでもないっす」
「よろしい」
こんな会話があたりまえ
隼人は冷たいけどいいやつだ。
あたしが怪我してバスケできなくなって1人で落ち込んでる時も隼人だけは共働きの親の代わりに毎日お見舞いきてくれて不器用に励ましてくれる。
あたしの大好きなお菓子もってきてくれたり怖くて不安になった時はあたしが眠るまでそばにいてくれたり。
隼人はいつのまにか背だってグンって伸びて中学の時は一部の女子に騒がれてたりもしたな。
あたしには全然わかんないけど（笑）
でも隼人のことは大好き。
あっ、もちろん幼馴染としてだよ？
こんなにいい幼馴染なんていないよ。
私ってどんだけ幸せなんだろ。
隼人のおかげでなんとか遅刻しないで学校に着いた。
クラス分けの紙で自分の名前指でなぞりながらを探す。
「綾瀬まはる綾瀬まはる綾瀬まはる．．．．．」
「1-3、俺と一緒」
「ほんとだ！あった
また隼人と一緒じゃん
これでえっと．．．」
「12回、幼稚園いれたら12回連続」
え！！
なんか隼人とは縁があるっていうか、ふつうにすごいね
「隼人きゅんこれって運命？」
「あほか」
いたっ
ちょっとふざけたかだけなのにデコピンされた
ひどい
教室の席の席は．．．名前順か
「げっ
また隼人ととなりじゃん！」
泉は男子の3番で綾瀬は女子の3番
「げってなんだよ
わるかったな俺で
てかすぐ席替えすんだろ」
「でも隼人の隣だと授業中寝ててわかんなくても教えてくれるしね！」
「おー
みんな席つけー
初ホームルームはじめっぞー」
え！？
あれが先生？
なんか若い。
「俺はこのクラス担任の天宮日向（あまみやひなた）だ
一年間よろしくな」
「せんせー何歳？」
一人の女子が聞いた。
「24だけど若いと思ってあんまりなめんなよ？笑」
「先生かっこいいー」
「彼女いるのー？」
などクラスの女子が騒いでいた。
入学式が終わると二週間後に控えた『クラス交流オリエンテーションキャンプ』略してオリキャの話になった。
毎年恒例でクラスごとに一泊二日の泊りで行うらしい。
今からその班決め＆教室の席をくじで決める。
「自分のひいた番号のとこに席移動させて各自トイレ休憩はいれー
次の時間には自己紹介やるからなー」
えっとあたしは女子の20番だから．．．窓側の1番後ろだ。
あ
「まじかよ」
隣は隼人。
「隼人があたしのことだーいすきなのはわかったけど席まで隣ってどんだけ好きなの！！」
「はぁ？
ばかじゃねーの
俺のことだーいすきなのはまはるの方だろうが」
「ちがうし
ばーかばーかばーーーーか
べー
え．．．」
その時目に入ったのは紛れもなくあの人。
忘れたくても忘れられないあの夏の。
「なにー？
そんなに俺のこと見つめちゃって
まさか俺に惚れちゃった？
俺代永蓮（よながれん）
でもごめんね俺はみんなのものだからさ」
なにこの人
ちゃっっっっっっら
こんな人があの人なわけない。
でももしそうだったら
「あの中学の時バスケやってませんでした？」
思いきって聞いてみる。
「あーやってたけど？」
え！！
「やっぱり！！
四中でしたよね！？」
「そうだけど
なにきみ俺のストーカー」
え．．．
なんでやっと会えたのに、ずっとずっと探してたのにまさかこんな人だったなんて。
再会への喜びよりも驚きと悲しみの方が何倍も大きい。
「まはる？
なにこいつ知り合い？」
私は幼稚園まで泣き虫だった隼人がどんどん自分を抜かしていくのが嫌だった。
だから隼人が始めたバスケも同じチームに入って抜かしてやろうと思って始めたのがきっかけ。
でもどんどん、どんどんはまっていって結果隼人が、とかじゃなくて自分がやりたいから、でバスケをするようになった。
そっからずっとバスケ一本だった私。
中学の大会の日引退先輩の引退試合だった。
後半ラスト1分で65対63で負けていた。まだまだわからない。
スリーポイントを決めれば逆転だ。
私は得意のスリーポイントをうった。
ドン
ピキ
「ピーー
レフリータイム
大丈夫ですか？
試合続けられる？」
審判が声をかけてきたのはわかる。
でも痛みで声が出ない。立つこともできない。
「ちょっとどいて」
その時体がすっとういて視界には綺麗な顔がうつった。
柔軟剤のいい匂い。
白くて少しきゃしゃな腕。
目にかかるくらいの前髪。
「あの人」はあたしをお姫様抱っこで救護室まで運んでくれた。
応急処置だけしてもらい病院へ
タクシーがくるまでずっとそばにいてくれた。
そのあとあたしがいなくなった後試合はボロボロに敗れたことしった。涙が溢れ出す。
「あたしのせいで．．．」
「あの人」はなにもいわない。
でも優しく背中をさすってくれる。
両親は共働きで病院へはこれない。
それを知ると
「一人じゃ心細いだろ？」
といいその人は一緒にきてくれた。
「もうバスケなどの激しい運動はできませんね」
検査後お医者さんにまず最初に言われた言葉。
お医者さんはそれからいろいろその怪我について教えてくれたが一切頭に入ってこなかった。
あたしからバスケが消える？
そんなこと想像できない。
あんなに泣いたのは多分初めての。
小さい子みたいに大声で泣きわめいた。
その人はやっぱりなにもいわない。
ただ優しく、優しく背中をさすってくれる。
そのあとすぐに隼人が入院に必要なものとかもってきてくれていろいろ話しているうちに「あの人」は消えていた。
名前ぐらい聞いておけばよかった。
お礼だってできてないし。
しっているのは四中ってことぐらいかな？
あとバスケをやっていたことそれぐらい。
しばらくしてリハビリ生活が始まった。
辛いことばかりだったけれど「あの人」にいつか会えると思うと頑張れた。
あった瞬間に思った。
これは運命だって。
トイレ休憩に入った後すぐに隼人に代永くんが「あの人」だったことについて話した。
なんぜかわからないけど隼人は不機嫌だった。
理由を聞こうと思ったけどトイレ休憩の次官も終わってしまいクラスの自己紹介に入った。
「名前順で男子から名前と趣味と一言ずついっていってなー」
「はーい」
なんか緊張するなぁ
友達できるといいな
そういえば代永くんバスケ続けてるのかなぁ
どんなプレーするんだろう。
けどなんであんなに変わっちゃったんだろ。
「ねーねーめっちゃかっこよくない？」
「ね！！背も高いし！
彼女いるのかなぁ」
女子がざわつきはじめた。
誰のことかなぁ
え！？
「泉隼人です
趣味はバスケっす
よろしくお願いします」
みんながかっこいいっていってるのってもしかして隼人！？
えーー
「ちなみに泉は主席だ」
天宮先生の一言でクラスの女子の目がハートになった。
そして自己紹介はどんどん進んていきあたしの番になった。
「綾瀬まはるです
趣味はまんがとかが好きです。
中学ではバスケやってました
高校ではマネージャーやろうかなと思っています
みんなと仲良くしたいのでよろしくお願いします。」
あたし変なこと言わなかった？
大丈夫かなぁ。
「鈴宮一凛（すずみやいちか）です」
あ、前の席の子だ。
前の席ってことはオリキャで同じ班ってことか。どんなこだろう
えてかめっちゃ美人！！
肌白いし顔小さいしまつげめっちゃ長い！！
「趣味はまんがとかが好きです
兄がバスケをやっていたのでバスケのマネージャーをやるつもりです
よろしくお願いします」
えめっちゃ共通点多いじゃん
仲良くなれるかな？今日はあと教科書配布で終わりだから早速次のトイレ休憩で声かけてみよっと。
「鈴宮さん？
あたし後ろの席の綾瀬まはるです！
まはるってよん下さい
鈴宮さんってめっちゃくちゃ肌白いしまつげ長いし目大っきいし可愛いですね
羨ましいなぁ」
「別に」
あれ？なんか思ってたのとちがう。
人見知りなのかなぁ
「バスマネやるんですか？
あたしもやろうかなって思っててもしよかったら今度見学一緒にいきませんか？」
「別にいいけど
あと敬語じゃなくていいき一凛でいいよ
まはる」
えなに今の「まはる」って破壊力やばいんですけど。
「ねーねーまはるちゃん、一凛ちゃん」
えぇーま、まままなまはるちゃん！？
「代永くん？
どうしたの？」
平常心平常心
「LINEやってる？
交換しよ！！
クラスLINEつくりたいしさー」
なんてフレンドリーな。
「はぁ？なに話しかけてきてんの？
キモいんだけど、誰があんたなんかとLINE交換すんだよ。」
えぇ一凛って男嫌い？
なんか意外。すっごくモテそうなのに。
「早くかせお前女子かよ
あと俺きもくねーよ」
「ちょっ勝手に取るんじゃねーよ
きもい、返せ」
「はい、追加完了
だからきもくねーよ
いつでもLINEしろよ
あ、まはるちゃんも
まぁいいやあとで泉からもらっとく幼馴染なんだろ？
あ、ねーねーゆいちゃんでしょー？
LINE交換しようよ〜」
チャラ。もう隼人とも仲良くなったんだ。
ん？んん？横で一凛が固まってる。
「おーい一凛？
大丈夫」
「っさった．．．くさった
携帯がくさった！！！！！
まじきもいなんなのきもいきもいきもすぎる」
一凛と仲良くなれたのはすっごく嬉しいけどこの班大丈夫か？
