私達が小屋に辿り着く頃には辺りは真っ白な霧に包まれ始めていた。


「取り敢えず休め。…アイツらもこの霧の中じゃここまでやって来ないだろ」



そう言ってルークはベッドを指差した。
私はフラフラとベッドに近付くとそのまま倒れ込む。すぐにでも睡魔が襲い掛かり、まぶたが重くなる。


少し埃っぽいシーツなのに、生活感を感じるのは普段ルークがこのベッドで寝ている証拠なのだろう。



ルークは窓に近寄るとそっと外の気配を窺った。



「奴らの気配は近くには感じねぇ。だけど見つかりたくねぇからな。灯りはつけないでおくぜ」



ルークの言葉に私は小さく頷いた。



「ルーク……」


「あ?なんだよ」



常に大人の気配を探っているのか、ルークは顔を窓の外に向け、返事だけを返す。



「ここに居れば安全なんだよね?」




「今はな。朝になって霧が晴れたら安全とは言えねぇ。だから朝になる前にここを出るぞ」



ルークはようやく窓から離れ、あちこちに傷がついているボロボロの棚から果物を二つ取り出すと、一つを私の方に放り投げた。



慌てて受け取り、ルークを見る。



「今の内に食って寝ろ。朝方まではまだ時間がある」



そう言ってルークは果物に齧りついた。