遠く、遠くで銃声の音がする。


その後に続く大人達の「待て」と叫ぶ声。


思わず振り返りそうになり、



「振り返るな!そんな暇あんなら走れっ!!」



私の手を引き、ひたすら森の中を走り続ける彼の声に私は必死に足を動かす。


「…ルーク、お願い……もっと、ゆっくり…」


街から抜け出し、森の中に逃げ込んだのは良いが、長い時間走り続けているせいで足も体力も限界だった。



だけどここで立ち止まる訳にはいかない。
ここで足を止めてしまえば捕まってしまう。



もう二度と……ルークに逢えなくなる。


そう考えると何があっても立ち止まってはいけない。


遠くから迫る銃声が精神的に私達を追い詰めてくる。




足がもつれて転びそうになり、ルークは少しだけ走る速度を落としてくれた。



「こっちだ。来い」


グイッと手を引かれ、私は再び転びそうになる。そんな私の身体を支えてルークは少し先を指差す。



「あっちに小屋がある。じきにこの森も霧で何も見えなくなるはずだ。そしたら奴らは追って来られねぇ。もう少し頑張れ」



ルークの言葉に頷き、私はルークの手を強く握り返した。
ルークも私の手を強く握り返してくれた。
私よりも大きくて温かい手。