十日月夜のおとぎ話

あたし達は別れた今も、お互いのネクタイを返せないでいる。


だから、二人ともいつもノーネクタイなのだ。




「――今、何想像してた?」


その声にハッとすると、すぐ目の前にサクの顔があった。


「なっ……何も」



目を逸らさなきゃ…


頭はそう命令するのに、体が言うことをきいてくれない。


もうどうすればいいかわからず、泣きそうになって、ただサクを見つめ返した。




「……なぁ。なんでオレが新しいネクタイ買わないか、考えたことある?」