十日月夜のおとぎ話

サクはシュっと自分のネクタイをほどく。


何も答えられずにいるあたしの目の前にそれを差し出し

「はい」と言って、あたしの手に半ば強引に握らせた。



そして唇の端をほんの少し上げて、今度はあたしの胸元に手を伸ばした。


あたしの意思などまるで無視して

勝手にネクタイに触れるサク。



信じられない行動だと思った。


あたしまだ何も言ってないのに……。


目の前の男は、

それが当たり前であるかのように、何食わぬ顔して、ゆっくりとあたしのネクタイを緩める。



あたしはまるで魔法をかけられたかのように、指一本すら動かすことができない。


それとは反比例するかのように、心臓はバクバクと激しく動いている。