十日月夜のおとぎ話

彼はみんなから「サク」って呼ばれてた。


あたしも人のこと言えないけど。

「サク」なんてヘンな名前だなぁ……なんていつも思っていた。


そのせいか、あたしはいつの間にか彼を目で追うのがクセになっていた。



ううん、違う。

あたしはまだ一度も話したことのない彼のことを……


本当は最初からずっと強烈に意識していたんだ。




「ルナ、ネクタイ交換しよ?」


だから、彼からのそんな言葉に

あたしの心臓は一瞬動きを止めたんじゃないかってぐらい驚いた。



うちの高校には誰が最初にやったのか、カップルがネクタイを交換する風習がある。


男子は濃紺、女子はエンジ色のネクタイ。


それを交換するもんだから、学内で付き合っている子がいる生徒は一目でわかった。



つまり

「ネクタイを交換しよう」

というのは……


そういう意味が込められているんだ。