十日月夜のおとぎ話

「甘っ。よくこんなん食えるね? 女ってほんと甘いもん好きだな」


長い前髪の奥から悪戯っぽい瞳であたしに微笑む。

あたしは逆に不自然なほど慌てて、彼から目を逸らした。



サクはあたかもその席が自分のために空けられていたかのような、

ごく自然な態度で、あたしの横に座った。



サクが登場した瞬間、この場の気温が2℃ほど上昇したような気がした。


彼のいる右側の腕が熱を帯びる。

彼の香りがあたしの脳の深い部分を刺激する。


ほんの少し動けば触れることのできるその距離に、

あたしの心臓はトクトクと音を立てた。



「あ。ほらっ! また垂れっぞ!」


「わ……」