おっと思わず興奮してしまった。
陽介くんは小雪のお兄さんで俺も昔はよくお世話になってたんだ。
大学生になって家を出たって母さん伝手に聞いたんだけど戻って来たんだ…。
「どう?来る?」
「行く」
俺の返事に小雪はにこっと笑った。
こいつ確信犯じゃねーか。陽介くんのワードを出したら釣れると思ってたんだろ。
それを知ってても俺はその手に弄ばれてしまうんだ。
「じゃあ、昇降口で待ってるから」
そのまま艶やかな黒髪が太陽に反射したまま去ってゆく。
そんなの待たなくていい!って言おうと思ったんだけど、俺がそう言うことを察知したうえで約束破って言い逃げするつもりだろうと見破られてる。
頭の回転を結城と競わせたらデッドビートを繰り広げることだろう。
その頭脳明晰さに何度助けられたことか。
でも、そんな小雪が涙まみれになったあの瞳を知っている。

