思い出すたびに楽しいしかなかった。
ずっと私のヒーローだった。
キラキラ光る後ろ姿に振り返ったときの笑顔。
全部、大好き、だった。
裏切りとか、浮気とか、私はそんなに優しくないから許せない。
一生、そこだけは恨み続ける。
だけど、初めての恋が結城でよかったって思える。
そんな物語になればいい。
「結城!!」
足だけは速くてよかった。
気合でしかなかったからめっちゃ疲れた。
だけど息を整えてる時間も惜しい。
目を逸らしたら消えてしまいそうで、二度と会えないかもしれなくて。
隣にいた愛華ちゃんがバツの悪そうな顔してるけれど、もう、いいの。
わがままだけど、今だけだから。
もう、その世界に私が入ることはないから。

