「あれ、美織が誰かを待ってるなんて珍しいね」
あ、小雪。
真っ白なマフラーをぐるぐる巻きにしてきょとんとしてる。
「そんなに珍妙な顔しなくてもいいのに」
「ほら、いつも塾だか習い事とかで放課後はスタートダッシュ極めてるじゃん」
そこまで忙しい人キャラになったわけじゃないんだけど。
すると、あ、と思い出したかのように小雪はそっと耳元で呟く。
「ヤツはまだ教室。もう少し時間かかるかも」
「……おっけ」
「それじゃあ、また明日、聞かせてよね」
「もちろん。じゃあね」
ここで、私も一緒に待つ!とか言わないあたり、小雪は楽。
明日笑えるために私がすること。
好きになってよかったってこれから結城を思い出すたびに笑えるように。
「あ、結城……」
声をかけようとして、手を伸ばした。
だけど、その腕は途中で固まってしまう。
誰に何を噂されてもいいと思ってた。
私がかわいそうな人認定されるのも、色んな噂の道筋作って笑いに変えようって決意してたんだけど。

