「ちょっと、手、出して」 何なの?って少しだけ疑いながらも美織はおずおずと右手を差し出す。 「目ぇつむって」 ちょっとだけ下を向いて唇をきゅって結んで待ってる。 ピアノがゆったりと流れる旋律だけが残る。 ポケットにずっとあった、少しあったかくなったチェーン。 黒いカーディガンを少しだけめくって、細い手首が露わになる。 握ったらつぶれてしまいそうで、それでも触れたらちゃんと体温がある。 細いチェーンの一つのわっかにして、もう、そこから零れ落ちないように。