次の部屋にはベンチがあって、画面の奥でゆらゆらと金魚が泳いでる。
もう、そんな季節になるのかな。
誰もいないから貸し切り状態になって真ん中を堂々と占領させていただく。
やさしいピアノ曲が流れて、このまま眠りにつけそうな空間。
「綺麗だね、ここは」
「すごい!って驚くよりも、じんわり心から癒される感じする」
この空間全体がスクリーンになっていて、本当にその場に入り込んだように思えるから、現実との境界線がどこにもないって思いそう。
美織と、この大きなスクリーンを占領してる。
「写真撮らないの?」
「あっ、撮るの忘れてた」
美織が慌ててスマホを取り出すとカシャカシャとカメラの音が響く。
「また、小雪ちゃんたちに自慢するんだろ」
すっげー羨ましがるだろうな。小雪ちゃんと悠李を連れてきたいぐらい。
悠李とか美術部だからこういうの好きそうだし。
「しないよ」
美織は下を向いてぽつりとつぶやく。
「ここは教えない」
その言葉が妙にはっきりしてて、二人だけしかいないこの空間に響く。
反芻して、頭の中に残る。

