「ねっ、結城」
たまごみたいなオブジェに美織は隠れてにっと笑う。
「おいかけっこしようよ。つかまえてっ」
そう言って、美織はふわふわしたたまごをかき分けて視界に見えないところまで行ってしまった。
そうだよ。あの人、毎年俺とリレーしてるほど足が速いんだわ。
ふわふわ、きらきら。
まるでお空にいるような?男子中学生がお空とかキモいか。
足がここにないみたい。
だけど、俺も毎年リレーの選手なんだよな。
どこ行った?
俺がかき分けて移動するごとにふわふわ舞い上がるから、視界良好とは言えない。
探して、歩き回って。
たった一つの宝物を求める冒険。小さい頃、宝物が何か知らずに剣を振りかざしていた少年がここにいる。
だけどやっぱり届かないんだって思い知らされるんだ。
俺には、その宝物を身に付ける資格はないんだって。
膝こぞうすりむいても、手が真っ黒になっても、汗を拭って絶望なのか?
HPゼロでゲームオーバー。
冒険終わっておうちへ帰る。
それでも諦められないのがお宝なのさ。
手を伸ばせ、顔を上げろ。
これは冒険のテーマソング?
いや、真面目にどこ行った?
別のゾーンに行ったとかないよね?
俺だけ置いてけぼり?
「わっ」
後ろから肩をぽんと掴まれたような感覚。

