美織も学校で使ってる黒いリュックで俺の帽子以外は普通の中学生にしか見えない。
ICカードの残高を確認してピッと改札に当てる。これすると都会にいるなーって感じする。
この日のために作ったんだから。自由行動はICカードあると便利だって学校から言われた。たしかにいちいち切符買うの面倒だもんね。
平日でもそこそこ人がいて、十分も間隔なしで電車が来るのって都会。まだ座る席があってよかった。
念のために同じ車両だけ見渡すと同中の人もしくは先生はいない。
ほっとして背中にいたままのリュックを膝に下ろす。
「電車乗ってどこ行くの?」
「ふふっ、それはお楽しみにしてて!」
お楽しみって言い方がかわいい。
どこかはやっぱり教えてくれないんだな。
横向きの電車は正面の景色がすいすいと自動で流れていく。
さっきの駅から少し離れると緑が多くなる。緑を見ると地元感じて安心するわ。
いつもと違う景色なのに隣に美織がいる。非日常の中に日常がある。
カフェとか商店街だとめっちゃ盛り上がったのに、お互いにしーんとしている。美織はスマホをいじっているわけでもない、俺もしおりを見ているとかでもない。
おんなじ景色を二人で見てる。

